近年は新築分譲マンションでの販売の方法として「専有卸スキーム」が一般的です。デベロッパーが販売会社に対してマンションの専有部分をまとめ売りし、販売会社が個々に各部屋を販売する形です。デベロッパーと客が直接やり取りをすればいいのに、なぜこの形が広まったのかという背景や、専有卸スキームのメリットやデメリットを紹介します。
専有卸スキームが起きた背景
「専有卸スキーム」は、どのようなことで普及したのでしょうか。その要因をいくつか紹介します。
デベロッパーの必要な資金が多額になりがちだった
かつてデベロッパーは、マンションの土地や建物を買い上げ、自らが客に部屋を販売していました。この方法の場合デベロッパーは多額の資金を準備しなければならず、デベロッパーにとって大きなリスクとなってしまいます。
マンションの買い上げのために、デベロッパーは金融機関などから融資を受けようとするでしょう。しかし準備できる資金が十分でなければ、マンションを一棟まるごと購入できないケースもあります。
そこで、デベロッパーは販売会社に、マンションの専有部分を売却します。そして販売会社がデベロッパーに代わって販売事業を行うことで、リスクを軽減できるようになりました。その際、デベロッパーは販売会社に販売手数料を払わなければなりませんが、採算がとりやすいので広がっていきました。
デベロッパーが大きく収益を上げられるモデルとなった
デベロッパーが投資家に売却するという方法が増えていったので、資金調達をしやすくなりました。その結果必要な自己資金が少なくなり、投資家との契約によって収益を得られるようにもなりました。そうして、デベロッパーにとってのハードルが下がる結果となったのです。
専有卸スキームのメリット
さまざまな立場の人が関わる専有卸スキームに、どのようなメリットがあるのか解説します。
デベロッパーの資金調達がしやすくなる
上記の方法によって、販売会社が部屋の販売を行うことで、デベロッパーの業務は少なくなり別の業務に集中できます。これはデベロッパーの規模が小さくても可能性が出てくることを意味します。
地域密着型の販売会社に、客への対応は任せられる
とくに大手のデベロッパーであれば、その土地に詳しいとは限らず地域に密着した販売会社に販売してもらうことでスムーズなやりとりが期待できるでしょう。その前段階での土地取得を目的とした住民との交渉などでも、地元の会社の働きかけは事業を早く進めるための推進力にもなります。
また、地域密着型の会社と共同でデベロッパーが事業を行えば、地域の銀行からも信頼を受けやすくなり、デベロッパーへの融資が行われやすくなるメリットもあります。
投資家の購入による収益獲得
マンション内の部屋・会議室・賃貸ショップなどを投資家に買ってもらえば、投資家はそこを利用する第三者から料金を取れます。投資家に対して「安定した収入」というメリットを示すことで、部屋購入の呼び水とできるでしょう。
また、投資家の収益の一部を会社にマージンとして支払う形態にすることで、デベロッパーの収益にもつなげられます。最近はマンションの中に居住スペースだけではない場所があるのも、その影響でしょう。
専有卸スキームのデメリット
専有卸スキームにはデメリットも存在します。それは次のとおりです。
価格が割高になる
開発者と客が直接やり取りをするよりも、間に1社多く入っているため価格の上昇が起きます。そのため同じ物件であっても、価格は高くなっているでしょう。
会社のリスクの影響が起こることもある
専有卸スキームにおいてデベロッパーは直接客と関わらないため、販売会社と客との関係がどうであるかが見えにくいでしょう。もし販売会社への信頼性が問題になっていれば、トラブルの元となり、ひどい時は会社の倒産にまで至ることもあります。客との関係が不透明になりやすいのは、大きなデメリットといえるでしょう。
投資に関するトラブルのリスクがある
投資家に部屋を購入してもらう際、投資である以上うまくいかないケースもあるでしょう。その場合、さまざまな要因が重なることとなるでしょう。投資をする人の自己責任と言ってしまえれば良いのですが、それでトラブルに発展する危険性もあります。もし投資家と契約をする場合は、きちんと取り決めをしておく必要があるでしょう。
まとめ
分譲マンションですっかり一般的になった専有卸スキームという方式は、デベロッパーにとって有利になった点も目立ち、大いに活用できる事業となりました。地域の販売会社との関係の築き方次第では、大きな取り組みも可能となるでしょう。しかし、デメリットも存在しますので、専有卸スキームの両面を知った上で、事業を行っていきましょう。
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